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■ 問題の所在

1か月あまりかけてだらだらとかんがえてみた。問題は、つぎのようなことの大切さがほとんど理解されていないところにあるのだろう。

  • アイディアに対する priority の尊重
  • 研究成果の正当な評価
  • 自由競争

学術研究の世界は、これらにすごく高い価値をおいている。

これらの倫理的な基準は、学術研究の世界に特別なものではない。どれも日常的なところで通用している倫理基準と基本的におなじものといえる。 1番目は、パクリはいけないということ。 2番目は、評価にあたって本来無関係な基準を持ち込んではいけないということだから、要するに差別の禁止ということ。 3番目は、独占禁止法とか公正取引委員会とかが管轄しているのとおなじような話で、競争への参入をさまたげる不合理な障壁をつくってはいけないということ。「学術」の名がつけばこれらの倫理を無視してよいとかんがえるのがまちがいのもと。むしろ、これらの倫理を日常的な基準より厳格に適用するのが学術研究の世界なのである。

まあ、理屈をしっているだけではどうしようもない、という側面はあると思う。件の Matimulogのコメント欄 で「学術ブログ」だから云々、などといっていた人たちは、学会で口頭発表したり学術誌に論文投稿したりしたことがないにちがいない。研究者がつどう現場でなにがおこっているかは、現場をしらないとわからないのかもしれない。

だが、しろうとのかんがえちがいだから放っておけばいい、というわけにもいかない。この問題は、倫理の問題であるだけでなく、対外的信用の問題でもあるからだ。

学術研究は、公からの経済支援に多くを負っている。大学や研究機関への助成はもちろん、個々の研究プロジェクトに対して補助金を出す仕組み(たとえば 科学研究費補助金 )ができあがっている。これらの補助金なしに研究をつづけるのは事実上不可能である。

多額の公的資金をつぎこむのがみとめられているのは、研究者が真摯に真理を追求するものであり、資金を有効に使って有用な知識をもたらすものだという信用があるからだろう。もし、学術研究の世界はパクリと八百長と談合で利権を分配しているだけのものだ、という印象がひろまってしまったら、だれが支援する気になるだろうか。

だから、まちがいは訂正しておかないといけない。現場をしらない人にもわかる、ちゃんとした解説が必要である。

そういう、外部への説明という目的で書かれた学術倫理の解説書はあるのだろうか。研究者のたまご向けのものはたくさんあるとおもうのだが、そうじゃなくて、「スポンサー」向けのやつ。

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» [memo] 問題の所在 [T. NISHIMURA’s Personal Blog]
問題の所在(廿日市) そういう、外部への説明という目的で書かれた学術倫理の解説書はあるのだろうか。研究者のたまご向けのものはたくさんあるとおもうのだが、そうじゃなくて、「スポンサー」向けのやつ。 とりあえずは「学術倫理」と「資金」の話は分離した方がよいでしょう。「スポンサー」というのは単純に契約関係ですので、極端なことを言えば、「学術倫理」に反することであっても、契約が成立すれば「資金」を獲得することが出来ます((私見では、応用系の自然科学分野においては「スポンサー」契約が純粋な「学術倫理... [続きを読む]

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科学研究費補助金 科学研究費補助金は学術上重要な基礎的研究(応用的研究のうち基礎的段階にある研究を含む)及び学術研究の成果の公開で、個人又は学術団体が行うもの及びその他文部科学大臣が別に定める学術研究に係る事業並びに独立行政法人日本学術振興会の事業に交付される補助金(科学研究費補助金取扱規程3条)。...... [続きを読む]

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