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■ 人口学的見地からみた柳沢発言

kmizusawa さんの分類 (http://d.hatena.ne.jp/kmizusawa/20070202/p1) によると、人口学的見地から批判を展開している人がいないようなので、書いてみることにした。とはいっても、私は別に人口学の専門家ではないので、そこんところよろしく。

○ はじめに

とっかかりは Schwaetzer さんのところから:

柳沢さんがああいう表現をわざわざしたのは金勘定の感覚からきとるのですわな、ようは。だから、経済学か数学の公式を利用するように、わざとああいう突き放したものの言い方した。本人は、素人にも分かりやすいだろうと思って言い換えた。経済学の入門書の説明みたいに。

"やっぱり". おしゃべりSchwaetzerの飲んだくれな毎日. <http://d.hatena.ne.jp/Schwaetzer/20070203>

経済学の入門書に

GDP = 人口 × 一人あたりGDP              (1)

である。人口は決まっているから、あとは一人あたまで頑張ってもらうしかない

とか書いてあったら、そりゃ単なる悪書。上の公式それ自体は正しい (というか、そうなるように定義されている)。だけど、一人あたりGDPを一人あたまの頑張りに読みかえるところがまちがい。

  • 需要側要因はどうしたんですか?
  • 人口はたしかに最大の供給制約ですが、ほかにもいろんな供給側の要因がありますよね? 一人あたまの頑張り (=労働時間?) 以外に思いつかないんですか?

前者はマクロ経済学の入門書に書いてある話。後者については、たとえば、 もっとこまかく人口を分解した労働統計 がすでに整備されているわけである。そうした基礎知識をふまえないで式 (1) をみて何事かを理解した気になるのであれば、無知としかいいようがない

で、good2nd さんのところから。

政策の話として、少子化問題を考えようってのに「女性に頑張ってもらうしかない」という話になってしまうのは、「つまり政策としてできることは別にありません」ってことなわけですよね。それが馬鹿げてるとか無能だとかいうのはよくわかるし、僕もそう思います。

……

喩えがいいとかダメとかいうことより、本題を議論してほしいです。本題を。

"機械にたとえたのって、そんな沸騰するような話ですかね?". good2ndの日記. <http://d.hatena.ne.jp/good2nd/20070129>

(…… は引用者による省略)

人口学 (population studies) と人口統計 (demography) をふまえたうえでの発言だったなら、その解釈でいいのだろうけど、本当のところ「単にわかってなかっただけじゃないのか」という疑念が……。

○ 柳沢さんは何を伝えたかったのか、あるいは何を伝えるべきだったのか

以下、中川秀直さんのサイトから引用する。柳沢さんの発言を正確に伝えているかどうかは不明だが、政権党幹事長が公式サイトに発表した文章ということで、不正確であったとしてもそれ自体で俎にのせる価値はあると思う。 [※不正確である可能性が高いです。コメント をごらんください。(2007-02-07)]

まず、1月27日松江市の講演で、柳沢大臣はどんなふうにおっしゃったのか。正確に再現しよう。

「特に、今度我々が考えている 2030年ということになりますと、2030年に例えばまあ20歳になる人を考えると、今いくつ、もう7、8歳になってなくてはいけないんですよ。もう生まれちゃってるんですよ。(20)30年のときに20歳で頑張っている人とか、やってくれる人はですね。

そういうようなことで、後は、産む機械って言ってはなんだけども、装置の数がもう決っちゃったということになると、機械って言っちゃ何だけど、機械って言ってごめんなさいね。その産む役目の人が1人あたまで頑張ってもらうしかないんですよ。みなさん、もうね、役人の人からいわれるんですが、2030年には大臣、勝負は決っているんです。こう言われちゃうんです」

「で、今どれくらい1人あたまで産んでくれるかというと、それが合計特殊出生率というこむずかしい名前で呼ばれる事実なんですね。今は日本は1.26、去年は1.29だったんです」

"(厚労相辞任論)不義の野党には絶対に譲歩しない". 自由民主党幹事長 中川秀直公式サイト. <http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=436>

2030年に20歳になる人がもう7, 8歳ということは、今年は……2018年??? まあ、これは単にまちがいで、「平成30年に20歳一歩手前になる人……」といいたかったのであろう (madhatterさんのコメント による)、ととりあえずは解釈しておきたい (「2030年」という年号には実は特別な意味を見出しうるのだが、後述)。それはともかく。

これはあきらかに総出生率 (general fertility rate) の話である。合計 (特殊) 出生率 (total fertility rate) の話ではない。「総出生率」とは、1年間の出生数をその年 (の真ん中) の15~49歳女性人口で割った値のことをいう。

出生数 = 15~49歳女性人口 × 総出生率        (2)

総出生率が1.26だと報告を受けたのだとすれば、それはたぶん「1,000人あたま」の数値である (この手の数値はパーミルで表す習慣があるので)。「1人あたま」の数値ではない。

これに対する中川さんの解釈はというと……

柳沢大臣は人口統計と合計特殊出生率の説明をしようとしていた。合計特殊出産〔ママ〕率は、15歳から49歳までの女子の年齢別出生率を合計したもので、1人の女子が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に産むとしたときの子どもの数に相当する。柳沢大臣は、この合計特殊出生率を分かりやすく言おうとして、そして、2030年までの20歳人口はもう決っていること、だから、子供をつくりたいと希望するならばその希望をかなえられるようにしなければならないということを、言いたかったのだと思う。

"(厚労相辞任論)不義の野党には絶対に譲歩しない". 自由民主党幹事長 中川秀直公式サイト. <http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=436> (〔ママ〕は原文どおりであることを示す)

すでに上で見たとおり、柳沢発言が「合計特殊出生率の説明」になっていると思うのがまちがいだけど、それは措くとしよう。「2030年までの20歳人口はもう決っている」についても、同様。

合計 (特殊) 出生率に関する中川さんの理解は、それ自体は正しい。この文脈で「15歳から49歳まで」という情報に重要な意味があるかのような書きかたをするのが変といえば変で、「0歳から120歳まで」にしたってちっともかまわないのだけれども、まあ、まちがいというわけではない。「1人の女子が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に産むとしたときの」の部分は、「各年齢に1人ずつの女子しかいない架空の社会を考えた場合に社会全体で生まれる」というような書きかたのほうが誤解が少ないと思うけれども、それも表現の問題である。でも「年齢別出生率を合計」(平均ではない) したもの、という定義を理解しているなら、合計 (特殊) 出生率から特定期間の出生数を導くことはできない、という当然の帰結に思いいたらないのはなぜ?

これに対して、30日の会見で記者は聞く。「子どもを産むということは極めて個人的な問題」ではないか、「一人頭〔で〕がんばって産んでもらうしかないみたいな発言の真意というのは、何なんでしょうか」と。

これに対して、柳沢大臣は答える、「個人個人の問題ではなく、統計的に出して、合計特殊出生率というものを各年度に出すということになっているのですが、その合計特殊出生率を上げるということはどういうことを意味するんだということを、ああいう表現で、その方がわかりやすいかと思って、したということなんです。ですから、全く統計的、技術的な問題として述べたということです」と。

"(厚労相辞任論)不義の野党には絶対に譲歩しない". 自由民主党幹事長 中川秀直公式サイト. <http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=436> (〔 〕内は田中による注記)

いや、だから、そもそも合計 (特殊) 出生率の話になってないんだってば。単なるいいまちがいかと思ってたんだけど、そうではなかったみたい。

柳沢大臣が不適切な比喩により説明したかったのは、「2030年までの人口というのはだいたい決ってしまった」「基本は2030年以降に、沢山子どもが産まれるような政策を採っていきたい」という基本のフレームワークについてである。

"(厚労相辞任論)不義の野党には絶対に譲歩しない". 自由民主党幹事長 中川秀直公式サイト. <http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=436>

なんで2030年なんだ。あと22年もあるのに。講演のときのは単に「平成30年」のいいまちがいとして理解可能だけど、そのあとの記者会見でも「2030年」といいつづけてて、それが厚生労働省サイト http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2007/01/k0130.html にものっている。 2030年をなんらかの特別な意味を持つ年とする意図が本来あったにもかかわらず、それをじゅうぶん説明しきれていないようにみえる。

柳沢さんが本当に説明したかった (あるいは説明すべきであった) 内容を、私なりに、せいいっぱい好意的に想像すると、つぎのような感じである。

  • 日本の労働法では15歳になればはたらける (労働基準法56条) ことになっている。しかし、実際には、進学率が高いため、ある年に生まれた子どもの大半が 労働力人口 としてあらわれるのは、大学までの教育課程の標準年限である22年を経過した後のことになる。
  • 今年 (2007年) の妊娠でできた子どもの出産は、大部分は2008年のことであろう。
  • 2008年生まれの子どもの大半が22年を経て労働力人口になる年が2030年である。
  • したがって、2007年に出生を増やす政策をおこなって2008年の出生数を増やすことができれば、その増加分は2030年以降の労働力人口の増加に寄与するものとしてカウントできる。
  • この2008年の出生数は、式 (2) のように分解できる。
  • しかし、2008年の15~49歳の女性人口は「もう決っている」のだから、2008年の出生数を増やすというのは、2008年の総出生率を増やすことに帰着する。

このような趣旨であったなら、人口統計の上では、じゅうぶん筋のとおった発言である。 2008年出生コーホートにおいて21歳までは労働力率が50%を下回る、という予測を別途根拠づける必要はあるが、 2006年「労働力調査」年平均データ によると、労働力率は18-19歳で32.6%、20-24歳で69.5%ということなので、たいしてはずしてないと思う。

この解釈が正しいかどうかは、結局のところ、柳沢発言にいう「30年のときに20歳で頑張っている人とか、やってくれる人」が何を意味しているかという問題になる。文脈が確定しないからなんともいえないけど、この「頑張っている」「やってくれる」を、性交とか出産とかの意味でなく、収入を伴う仕事に従事するという意味にとっても不自然ではないと思う。要は、生産可能年齢人口が減少するなかでどうやって労働力率を確保していくか、というのが人口政策の「基本のフレームワーク」のはずであって、それをちゃんと説明すべきだったんじゃないか、ということだ。

なお、人口が「もう決っている」問題については、Apeman さんがつぎのように揶揄している:

「2030年に30歳になる人」の数というのは「決まっている」のかといえば、もちろんそんなことはありませんね。「2030年に30歳になる人」の数を増やすための一つの選択肢を排除して考えているだけのことです。

"自民党には算数の顧問が必要らしい". Apes! Not Monkeys!. <http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C1634184641/E20070205202036/]>

しかし、上記のように考えて、2030年の労働力人口を 出生のパラメータだけによって 変化させうる可能性について論じているのだと考えれば、それほど変な話ではないと思う。 2007年中に大量に移民を受け入れるというという選択肢は、現在の状況を考えればありえない話なわけで、妊娠する可能性のある女性の数は事実上決まっていると考えるしかない。長期的な労働政策トータルの話としては、「ここでは直近の出生政策の効果という点に限定して話しますが……」という断りを入れておく必要がある、というのはもちろんである。でもそれは、中川さんが引用してない部分でちゃんと断ってたのかもしれない。

○ 本題

これで、やっと、「はじめに」で述べた「1人あたまGDP」問題と同じ水準までたどりついたわけである。 good2nd さんのいう「本題」の議論にようやく入れるのだけど……。それには、出生という現象がどういう仕組みで決まるのかを把握しないといけない。とりあえず最新の人口推計:

推計結果はどうでもいいので、そのプロセスを理解することが大事である。だけど……これ読んでわかるのは「これだけ読んでも中身はさっぱりわからん」ということだ。「コーホート要因法」(p. 7) というのを使って、女性の出生コーホートごとに年齢別出生率を推定していることはわかる。しかしその中身がどうなっているんだかわからん。そこにインプットとしてあたえられる「各指標を実績統計に基づいて投影により求め」(p. 7) ってのも、どういうことなんだ。

この報告書とは別に

というのも公表されている。この22ページに「一般化対数ガンマモデル」というのが出てくるんだけど、これが「コーホート要因法」の具体的な中身なんだろうか。

結局、もっと専門的な論文にあたらないとどうしようもない、ということか。とりあえず、『人口問題研究』 (ISSN=03872793) のバックナンバー <http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/sakuin/jinko/jsakuin14.htm> をみてみるかな。ひまができたら。

しかし、報告書読んでも推計の内容がさっぱり理解できないようになっているのはまずいと思う。あまりにも高度に専門的な内容を盛り込むのはふさわしくないとの判断かもしれないが、それでも最低限、根拠となる論文などをあげておくべきである。

○ おわりに

というわけで、筆者の力不足により、たいして話が進展しないままに終わります。おそらく

  • 結婚という現象をどうあつかうか
  • 経済合理性にしたがう (したがって経済的誘因によって操作可能な) 部分とそうでない部分をどう切り分けるか

というあたりがポイントになるという見当はつけているのですが。

人口学にくわしいかたのフォローがいただけるとうれしいところです。

○ 参考文献

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コメント

> 2030年に20歳になる人がもう7, 8歳ということは、今年は……2018年??? まあ、これは単にまちがいで、「平成30年に20歳一歩手前になる人……」といいたかったのであろう

いや、引用してる発言にもあるように、20歳じゃなくて30歳になる人って言ったって書いてるとこがほとんどで、正確に再現とかいいつつ中川さんとこが間違ってるだけなんじゃ。

投稿: どうでもいいですが | 2007-02-07 02:59

> 総出生率が1.26だと報告を受けたのだとすれば、それはたぶん「1,000人あたま」の数値である (この手の数値はパーミルで表す習慣があるので)。「1人あたま」の数値ではない。

合計特殊出生率は人口の年齢構成が一定ならn人あたまの総出生率に35/nをかけたものになるわけだから、1人あたまの数値でも1000人あたまの数値でも、総出生率の数値が合計特殊出生率と似たような数値にはなりません。なのでその数値が総出生率のことだったっていうのは無いでしょう。

てかなんで柳沢さんの話が総出生率の話ってことになるのかよくわからんのですが。

投稿: ふにゃ | 2007-02-07 03:35

ああ、年齢構成が一定じゃないから、機械の数をかけても生まれてくる子の数になるわけではないって話かな? でも定量的には違っても、定性的な話をしてるだけだし、合計特殊出生率の話じゃないとは言えないんじゃ。

投稿: ふにゃ | 2007-02-07 03:41

>この「頑張っている」「やってくれる」を、性交とか出産とかの意味でなく、収入を伴う仕事に従事するという意味にとっても不自然ではないと思う。

「数がもう決っちゃった」が意味しているのが「もう生まれちゃってる」ということなのだとすると、やはり「やってくれる」は「出産する」を意味していると理解するのが自然でしょう。
もっとも、官僚のレクチャーは田中さんの推測通りの主旨だったのに、それを大臣が誤解したという可能性はありますね。

>2007年中に大量に移民を受け入れるというという選択肢は、現在の状況を考えればありえない話なわけで、妊娠する可能性のある女性の数は事実上決まっていると考えるしかない。

「少子化対策のために移民を受け入れるべき」という立場を私はとらない、という前提でのはなしですが、移民の場合別に2007年中に受け入れなければ(2030年に)間に合わないということはありません。2017年に10歳のひとが移民してくれば2007年にゼロ歳児を受け入れたのと同じ効果を持ちます。
移民の受け入れだけで少子化に歯止めをかける、というのはおっしゃるとおりとうてい無理なはなしだとは思いますけど。

投稿: Apeman | 2007-02-07 11:45

すいません。引用していただいてありがたいのですが、別に経済学の入門書にほんとに書いてあるとか、そういう意味じゃないので。想像はしていたんですが、どうもそちらに誤解される方が多いようですけれど。

投稿: Schwaetzer | 2007-02-07 12:12

どうでもいいですが さん:

 情報ありがとうございます。Google で「柳沢 出生率 2030年 20歳」と「柳沢 出生率 2030年 30歳」をひいてみると、どちらも出てきます。「20歳」のほうはほとんど中川さんのところからの引用みたいですが、「30歳」のほうがよくわからないので、しばらくようすをみたいと思います。
 「30歳」のほうが、「30歳人口はもう決まってる」→「でも22歳以下はまだ決まっていない」→「まだなんとかなる」というふうにつながるので、理解しやすくなりますね。

>正確に再現とかいいつつ中川さんとこが間違ってるだけなんじゃ。
 まちがいなんだったら、はやくなおしたほうがいいでしょうね。どんどん増殖してるし。しかし、中川さん、地の文で「2030年までの20歳人口はもう決っている」って書いちゃってますが……。

投稿: 田中 | 2007-02-07 20:21

ふにゃ さん:

>その数値が総出生率のことだったっていうのは無いでしょう。
 数値をチェックするまでもなく、その後の記者会見からみるかぎり、本気で合計 (特殊) 出生率 (TFR) の説明をしてたつもりみたいですね。頭痛いです。そこまでいってしまうと、ちょっと弁護のしようがない。

>年齢構成が一定じゃないから、機械の数をかけても生まれてくる子の数になるわけではないって話かな?
 独力で (ほぼ) 正解にたどりつかれたようで、なによりです。ちなみに実際の「年齢構成」のイメージは
http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/pyra.html
でみることができます。
 もっとも、「年齢構成が一定」(=人口ピラミッドが平坦) というきわめて強引な仮定をおいたとしても、TFR は「35人あたま」の数値にしかならないですが。

>でも定量的には違っても、定性的な話をしてるだけだし、
 「定性的」=「いいかげん」という意味でいいのでしょうか?
 講演がいいかげんだったことも問題 (嘘を撒き散らしてしまったという点で) ですが、人口 (統計) 学の理解がいいかげんであることがそもそもの問題なんですよね。

投稿: 田中 | 2007-02-08 00:04

定性的ってのは係数なんかの具体的なパラメタはわからないけど A は B に比例する(あるいは何乗かに比例、指数関数に比例)とか、あるいはもっと定性的になら比例か指数関数的かわからないけど A は B が増えると増える、とかそういう普通の意味です。いい加減や大雑把とは言えるけど、嘘って意味ではないです。

合計特殊出生率も総出生率もそんな違うわけではなく、出産者の年齢構成比と全ての女性の年齢構成比から決まる係数をかければ同じになります。なのでその係数に関することを除けば同じ性質をもってます。女性の総数が大して変わらないように、その係数もあまり変わらなければ、赤ちゃんの数が増えるためには合計特殊出生率があがってもらわないといけない、ともいえます。ただ、その係数がそんなに重要でなく、話が煩雑になるだけなので端折ってしまった、ってことで嘘出鱈目を言ってるわけじゃないと思うんですが。

投稿: ふにゃ | 2007-02-08 01:30

しかしなんかこんな捨てハンで変に絡んで相手してもらってスミマセン。はてぶから飛んできてどんな人が書いてるのか(ていうか実名で書いてると)把握せず書き込んでました。

投稿: ふにゃ | 2007-02-08 01:38

 出生数の計算に TFR が使えないことは、実際のデータで計算してみると実感できると思います。2004年のデータ (http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/Popular2006.asp?chap=4&title1=%87W%81D%8Fo%90%B6%81E%89%C6%91%B0%8Cv%89%E6 の表4-8)
によると、15-49歳女性人口は 27,771,890 出生数は 1,110,721 ですから総出生率は
GFR = 0.03999 です。これに対して TFR = 1.28867 ですから35で割ると
TFR/35=0.03682 です。
GFR のほうが8%くらい大きくなります。出生数になおすと 88,160 の差。
 このずれの原因は、出生率の高い30歳前後の人口比が2004年時点では比較的高かったことです。2005年の人口ピラミッド
http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/2005.gif
をみるとよくわかりますが、今後、このピラミッドは1年ごとに上方に移動していき、30歳前後の人口が減っていきます。今後の出生数の減少をもたらすのは、まずはこの年齢構成の変動なんですよ。だから、2030年の人口がどうこう、というときにはまずもって年齢構成の効果を考えるわけです。TFR というのがそもそも年齢構成の効果をのぞくためにつくられた指標であることを考えれば、それをこの文脈で持ち出すことが的外れなのは明白でしょう。

投稿: 田中 | 2007-02-08 04:03

ふにゃ さん:

上のコメントは、その前のふにゃ さんのコメント2本を読まずに書きました。ふにゃさんのいう「係数」というのは、上で計算した 35*GFR/TFR (=1.08) のことにあたるのですよね。人口ピラミッドを見れば実感してもらえると思うのですが、この係数があまりかわらないと考えるのは現実的でない。むしろ、現在の日本は、この係数が大きく変動することを前提に考えなければならない状況にあるのです。

>定性的ってのは係数なんかの具体的なパラメタはわからないけど A は B に比例する(あるいは何乗かに比例、指数関数に比例)とか、あるいはもっと定性的になら比例か指数関数的かわからないけど A は B が増えると増える、とかそういう普通の意味です。
 それは「普通の意味」ではないと思いますが。……分野によってはそういうこともあるんでしょうか。
 ともかく。たとえば、比例関係にあるものを「単調増加する」と表現するのは問題ないと思います。しかし、単調増加するということしか特定できていないのに「比例する」といってしまうのは、アウトでしょう。
 柳沢さんの講演でも、「人口が一定なら、子どもの数は TFR の増減と同じ方向に動きます」くらいの内容であれば、別に私も文句はつけなかったし、そもそもだれも問題にしなかったでしょう。それを「1人あたま」といってしまったわけで、完全に関数を特定してしまっているので、やはり「嘘」だと私は判断しています。
 ひょっとすると、ふにゃ さんは、「今どれくらい1人あたまで産んでくれるかというと、それが合計特殊出生率というこむずかしい名前で呼ばれる事実なんですね」というところは、関数が特定されていないと読んでるのかも知れないのですが……、でもそのあとに「今は日本は1.26」とつづくので、この1.26は「1人あたま1.26人」と読むのがふつうでしょう。「この1.26と女性の頭数を、なんだかわけのわからない関数にとおすと、子ども数がえられる」とはふつう読まない。TFR に関しては「女性が一生の間に産む子どもの数」という誤解が相当ひろく流布してしまっている下地があるわけですし (だからこそ、誤解を解かなきゃいけない立場の人が誤解をひろげてどうするのよ、というのもあります)。
 講演に嘘がふくまれていても、それは柳沢さんがちゃんと人口統計を理解していて、「その係数がそんなに重要でなく、話が煩雑になるだけなので端折ってしまった」というだけのことであるなら、ある意味傷はあさいといえます。が、どうもそうではないように思うのですよね。

>しかしなんかこんな捨てハンで変に絡んで相手してもらってスミマセン。
 いえいえ、お気になさらず。私のほうも、議論をとおして、何が問題なのか、ずいぶんしぼれてきた気がします。もし ふにゃ さんの正体が柳沢さんであったなら、こんなうれしいことはないのですけど。

投稿: 田中 | 2007-02-08 06:30

>「人口が一定なら、子どもの数は TFR の増減と同じ方向に動きます」くらいの内容であれば、別に私も文句はつけなかった
 これは保留します。まちがってるような気がしてきたので。

投稿: 田中 | 2007-02-08 12:08

Schwaetzer さん:
 えーっと、なんというのか、柳沢発言は、数字に過剰に実質的な意味をあたえようとしたがゆえの問題なんじゃないか、というような趣旨なんですよ。それで、そういう本は実際にあります。

投稿: 田中 | 2007-02-09 00:47

> この係数があまりかわらないと考えるのは現実的でない。

そうなんですか。変わるといってもどれぐらいの期間でどの程度変わるかってのが問題なわけですが、短期的に大きく変わりはしないだろうぐらいで、ああ書いてしまったんですが。

> もし ふにゃ さんの正体が柳沢さんであったなら

残念ながらただの数学の学生っす。

> それは「普通の意味」ではないと思いますが。……分野によってはそういうこともあるんでしょうか。

物理とか数学だとそういう意味が普通のような。むしろ他で違ったのかという。

> 関数が特定されていないと読んでるのかも知れないのですが

期間は1年とかと決めて、strict(「厳密」というほどじゃなくても)に読めばGFRのことだろうって話にはなりますね。

> TFR に関しては「女性が一生の間に産む子どもの数」という誤解

ここちょっとびっくりです。もちろん実際の数値とは違いますけど、ここ一年の数値から「女性が一生の間に産む子どもの数」という予測をするとなると TFR が一番合理的だと思うんですが、ぼくもなんか誤解してるんですか? それとも所詮予測の値であってstrictには違うよってこと?

と書いてからいろいろ考えたんですが、GFRは予測としての意味をもってるわけではなく、その点でTFRとは全然質が違う、ってのはかなり重要ですね。TFRと実際に生まれてくる子の数が大きく乖離し続けるような特殊な例も考えられるし。

> まちがってるような気がしてきたので。

特殊ってほどでもない状況でもTFRの増減と逆向きになりえますね。

投稿: ふにゃ | 2007-02-09 00:55

>変わるといってもどれぐらいの期間でどの程度変わるかってのが問題
 人口の変動は一般にイメージされているよりずっとダイナミックなんだと思います。

>物理とか数学だとそういう意味が普通のような
 そうなんですか。勉強になります。
 私の理解は、「あるかないか」が定性的問題で、「どれだけあるか」が定量的問題、という感じの理解ですね。化学とかはたぶんそうです。まあ、それを敷衍すれば、あるパラメタの符号を識別するのが定性的分析で、そのパラメタをじゅうぶんな精度まで特定するのが定量的分析、というようなわけ方はじゅうぶん理解できです。

>所詮予測の値であってstrictには違うよってこと?
 まずはそういうことです。人口統計の概念では「完結出生力」または「累積純出生率」がそれに相当します。
 で、TFRの変動からこれらを予測したいのであれば、すくなくとも年齢別出生率にばらさないとどうしようもないわけです。全年齢でおなじ方向に変動していればたいして問題ないですけれども。

では。
1週間くらいコメントできないと思います。

投稿: 田中 | 2007-02-09 20:33

うえで ふにゃ さんが言及している「係数」の話は
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei07/sankou.html
にありますね。たまたまみつけたので、メモ。

投稿: 田中 | 2009-02-13 01:21

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